ニートについて検索しようとすると、「ニート 追い出す」というような検索ワードがサジェストに出てきます(下図、執筆時点の様子)。
これはつまり、「ニートを追い出して強制的に自立させたい」と思っている人が一定数いるということなのでしょう。
しかし私はニートだから分かるのですが、そのようなことをするのは逆効果になる可能性が高く非常に危険です。そこで今回はニートを追い出すことの危険性を示し、代わりにどうすればいいのかを考えていきます。
※今回の記事はニート本人というよりは、ご家族など周囲の方向けです。
ニートを無理やり追い出してはいけない理由
はじめに「なぜニートを無理やり追い出してはいけないのか」ということについてですが、理由としては次の3つがあるからです。
- 自立するどころか路頭に迷うだけだから
- ショックやストレスで精神疾患になる場合があるから
- ニートの恨みを買ってトラブルになる可能性があるから
では一つずつ詳しく見ていきましょう。
自立するどころか路頭に迷うだけだから
まず一つ目の理由は、追い出されたニートは自立するどころか単に路頭に迷うだけだからです。
そもそもニートは自立できないから親の脛をかじっているわけで、無理やり追い出したところで「じゃあ仕事を探して自立するぞ!」などとやる気を出すはずがありません(※追い出されて奮起する人タイプの人はニートにはなりません)。
むしろ親に面倒を見てもらわないと生活できないわけですから、追い出されたら必然的にどうすればいいのか分からず路頭に迷います。これでは遅かれ早かれホームレスになってしまうでしょう。なのでもし「自立させたいから」という理由で追い出すつもりならそれは間違っていると言えます。
ショックやストレスで精神疾患になる場合があるから
次に二つ目の理由は、追い出されたニートはショックやストレスで精神疾患になってしまう場合があるからです。
ニートになるような人はストレスに弱い場合が多く、さらに生まれつき精神疾患になりやすい性質をもっていることも少なくありません。つまり無理やり追い出すようなことをしてニートに多大なストレスを与えると精神疾患になってしまう危険性があるのです。
そして例えばの話ですが、追い出したニートが発狂した場合は警察のお世話になる可能性が非常に高いです。そしてそうなったら責任を問われるのは追い出した側になるでしょう。こうなってしまうと追い出したニートが精神障害つきで戻ってくるだけでなく、追い出した側もお咎めを受けることになるので本当に誰も得しない結果になってしまいます。
ニートの恨みを買ってトラブルになる可能性があるから
最後に三つ目の理由は、ニートの恨みを買ってしまいトラブルになる危険があるからです。
私はニートなので「ニートは危険だ」などとは言いたくないのですが、そうは言っても「窮鼠猫を嚙む」ということわざがあるように、追い詰められた人間は何をしでかすかわかりません。怒り狂ったニートが暴れるなどといった可能性もゼロではないことを考えると、ニートを追い出すのはそれなりにリスクを伴うといえます。
ニートを追い出す代わりにやるべきこと
ではニートを追い出すことができないなら、代わりにどうすれば自立を促すことができるのでしょうか。ここでは次の3つの状況別に考えてみようと思います。
- 心身ともに健康なのに単に怠けているニートの場合
- 社会に適応できずニートになった人の場合
- 病気などでやむをえずニートになった人の場合
心身ともに健康なのに単に怠けているニートの場合
まずは健康なのに怠けているだけのニートの場合です(※実はニートのイメージに反してこういうタイプは少数派です)。この手のニートは「働くのが面倒くさい」というシンプルな理由で働いていないだけで、やる気や興味さえあれば普通に働けるだけの能力があります。
したがって、いかにして働くことに興味を持たせるか?が重要です。そこで本人の興味と適性がうまく合う職種を探し、その面白さを知ってもらえるような工夫をする必要があるでしょう。
ちなみに、このタイプのニートの中には激高しやすい人も少なくないため、下手に刺激すると怒り狂う可能性も否定できません。上から目線で何か言うのではなく、あくまでも対等に接するのが良いのではないかと思います。
社会に適応できずニートになった人の場合
次は何らかの理由(いじめなど)で社会に適応できずニートになってしまった人の場合です。この手のニートは育った環境や発達障害などが原因でコミュニケーション能力が低かったり、ストレスに弱かったりします。したがって無理やり追い出すと事態が悪化しやすいといえます。
そこで、このようなニートの人には次の2つのやり方があると思います。
- 就労支援施設などで社会に慣れる訓練をする
- あまり人と関わらずに済む仕事に就く
一つ目は、社会に適応できるようにトレーニングする方法です。世の中にはニートや引きこもりなどの就職をサポートする事業所があるので、そういったところに通ってみるのは一つの手だと思います(※ただし悪徳業者に注意してください)。
そして二つ目は、そもそも人と関わるのが上手くいかないんだから、無理に矯正はせずに人と関わらずにできる仕事を探すという方法です。まあそういった仕事はレアだと思いますが、探せばないこともないと思います。
どちらの方法を採用するかは本人の意見も聞きながらよく考えてください。いずれにしても、このタイプのニートの方は精神を病む危険性が普通の人よりも高いので慎重な対応が必要です。
病気などでやむをえずニートになった人の場合
最後は病気(特に精神疾患)でやむをえずニートになってしまった人の場合です(※このような場合は「ニート」と呼ぶのは不適切かもしれませんが、ここでは便宜的にニートに含めています)。
このようなケースでは、何よりもまずは治療・回復に専念して焦らないことが重要です。とりわけ精神疾患の場合、傍から見れば怠けているだけのように見えることがあると思いますが、本人からしたらそうではなく「やりたいのに体が動かない」などといったことは往々にしてあります。
なのでこうしたときに周囲が「怠けていないで働け!」などと叱責するのは逆効果です(たとえるなら、足を怪我しているのに「マラソンを走れ!」と言われるのと同じです)。くれぐれもそういうことはしないように気を付けましょう。…いいですか、ましてや追い出すなんてとんでもないなので絶対にそういうことは考えないようにしてください。追い出したらほぼ確実に最悪の結果になります(本人の症状が悪化する、警察のお世話になる、追い出した側は責任を問われる…等)。
じゃあどうすればいいのかというと、まずは回復を待って、もし調子が良くなってきたら就労移行支援や作業所などでトレーニングしてみると良いかと思います。しかし繰り返しになりますが、症状が落ち着くまでは絶対に焦らないことが大切なのでこのことだけはしっかり頭に入れておいてください。
おわりに:ニートを追い出すのはデメリットだらけ
以上、ニートを無理やり追い出してはいけない理由と、代わりにどうすれば良いのかということについて書いてきました。
既に述べたようにニートを追い出すのはデメリットしかないですし、そもそも追い出して何とかなるタイプならニートにはならないということも考えると悪手でしかありません。
まあ確かにご家族の方としてはニート問題は悩ましいことであり、強引な手段に頼りたくなる気持ちも分かります。しかし、ニート問題は一筋縄では解決しない場合が多いと思いますので、きちんと知恵を絞って丁寧に対処するしかないと思います。あとはニートに関する相談にのってくれる機関や支援サービスなども各地域にありますので、そういったものもきちんと調べて活用するようにしましょう。
今回は以上!